ユニーク傑人列伝#1 【トイズクラブ代表Aさん ~その時頭髪が抜けた~】
コラム・ブログ
先日、ものしり.com編集部はトイズクラブ日本橋本店様を訪問し、代表のAさんにインタビューをさせていただきました。
(その時の記事はコチラ)
その中で、Aさんの貴重な体験談を伺い、これに感銘を受けた私たちは、このような傑人の愉快談を記録し、列伝として未来永劫子々孫々に伝えていくべきであると考えました。
そして立ち上がったこのシリーズ「ユニーク傑人列伝」
第一回はAさんの現在のヘアースタイル確立までの歴史に迫ります。
題して、
(以下、ドキュメンタリー調でお送りします)
第一章:発端
事件は、数年前のある日、一人の営業マンがAさんのもとを訪れたことから始まる。
営業の内容は、
写真家、R氏のパイパンモノDVD。これを各地域に展開したく、大阪ではAさんのところに置かせてもらえないか、というもの。
試しに視聴してみたところ、そこには「これあかんのでは?」と思うようなスジ映像が満載だったという。
営業の話によると、「これは法改正とともにそれに引っかからないよう作られたものだし、『18歳以上で、スジは見えているが具は全く見えていない、ビラも見えてない』これをわいせつ物とするのか否かで裁判で争ったこともあり、『これはわいせつ物ではない』という判例が出たものだ」とのことだった。
だが、Aさんは慎重だった。自らの耳目で安全性を確かめるまでは納得できないと、メーカーのR氏を訪ね、様々な疑問をぶつけた。
R氏から得られた回答は説得力のあるもので、安全を確信したAさんはこのDVDを採用した。
第二章:黄金期
お店は大盛況となった。DVDは一本あたりウン万円もするような高価なものだったが、とにかく売れる。九州から遠征してくる者もおり、さらにそういった人物の購入本数は一本にとどまらない。この頃は客単価が大きく、売り上げは非常に好調だったらしい。
そんな時、ある情報がAさんの耳に入った。AさんにこのDVDの話をする以前、同じ大阪に店舗を構えるM店にこの話がいったらしいが、彼らは危険を感じ、取り扱いを断ったというのだ。
「じゃあ危ないんじゃねーの!?」
Aさんは驚き、再度メーカーに尋ねた。
「ほんまにこんなんええんか!?」と。
メーカーからの回答は理論的で、Aさんを納得させるのに十分なものだったようだ。
今度こそ安全を確信したAさんは、本店を中継地とし、他の各地域の息の掛かった店舗に件のDVDを広め始める。黄金期の幕開けだった。
第三章:暗雲
黄金期はほんの一瞬で幕を閉じる。
間もなくこのDVDを取り扱っている関東地方の店舗が警察に注意を受けたのち、起訴されたという。
このような事例があったにも関わらず、メーカーからDVD回収の通知は来ない。尋ねてみると、「現在該当店舗はモメており、上告する予定である」とのこと。
Aさんが「あかんのやったら、引き上げるよ?」と確認を入れると、力強く「大丈夫です」という回答が返ってきた。
数ヵ月後、広島の所轄が店舗を見回りに現れる。
きっかけは些細なことで、この店舗で過去媚薬の取り扱いがあり、注意を受けたことがあるという話を小耳に挟んだ所轄の署員が、偶然暇があり、軽い調子で店舗を訪れるに至ったのだ。
その際にこのDVDが警察官の目に留まり、ガサ入れの末「アウト判定」が出る。
なんと、広島の店長が御用となった。
その件以降、Aさんは覚悟を決め、いつ逮捕されてもいいように弁護士をつけ、常時スーツケースを持って仕事をするようになった。
第四章:前門の虎、後門の狼
一週間後、いよいよ広島県警がAさん逮捕に乗り出した。
大阪まで出向き、Aさんの勤務先や自宅をマークした素行調査が行われる。逮捕は時間の問題かに思われた。
だが、Aさんは多忙の身であった。丁度逮捕が予定されていた日、彼は早朝から広島の店舗へ諸々の段取りをしに向かうことになっており、意図せずして警察官のマークを掻い潜ってしまう。
全くの偶然だったが、この動きが逃亡であると疑われ、この後Aさんは広島県警の全力の追跡を受けることとなる。
高速道路を走るAさんの後ろに、やけにいかつい車両が張り付く。
覆面パトカーであることはすぐに見破ったAさんだったが、よもやこの日、自分が逮捕から逃走していることになっているとは知らず、
「スピード違反してへんのになんで付いてくんのかな~」と呑気なことを考えていた。
そのまま広島インターを降りようとウインカーを出した途端、突然後ろの覆面パトカーはパトランプを光らせ、猛烈な勢いで彼の車に迫ってきた。
「あ!もしや!?」Aさんは何かに気付く。
適当に停車しようと思い正面を向くと、料金所前ではパトカーが二台止まり、警察官が鬼の形相で旗を振ってAさんを待ち構えているのが見えた。
「俺、どんな悪人やと思われてんねん!?」
第五章:逮捕、そして留置所へ
警察署に連行されるAさん。ちなみに、この時はまだ任意同行ということになっていた。
広島県警は当初大阪にてAさんを確保する予定で、事情を知る人員はそちらに割り当てている。逮捕状も大阪にあるため、広島インターでAさんに手錠がかけられることはなかったのだ。
警察署に着くなり、署内の警察官から
「逮捕状を送ってもらうんで、Aさんのお店のFAX使わせてもらうけどいいかな」と告げられる。自分の逮捕状を自分のお店から送ってもらうという、なんとも奇妙な状況だった。
逮捕状が届き、無事(?)にAさんには手錠がはめられた。
留置所に送られるAさん。果たして彼はどうなってしまうのか。
最終章:その時、頭髪が抜けた
Aさんの拘留期間は23日で、これは一件の逮捕につき拘留される最長の期間だった。
留置所の生活は下記のようだったという。
①冷たいコンクリート部屋に三人一組で生活。
②お風呂は週1回、先輩(拘留期間が長い者)から順番に入り、最後の方はお湯が濁ってとても浸かれたものじゃない。
③朝に体操の時間があり、タバコが吸える。取調べ中も吸えた。
④三食昼寝付きだが禁酒。それまで毎日飲酒生活を繰り返して下痢症だったAさんも、拘留二日目からは快便の健康体となっていた。
そんな留置所生活中のある日、部屋の掃除中にAさんはあることに気付く。
髪の毛が抜けている。
「俺のだけが・・・・・・!」
当時Aさんの頭髪はスポーツ刈りほどの長さで、他二名の同室者の髪は長かった。嫌でも見分けがつく。
これは、状況や生活の変化によるストレスもあるが、なにより不衛生な環境が一番の原因だったと当人は語る。
髪が抜けて抜けて仕方がないので、ついにはボウズにすることにした。
現在のAさんのヘアースタイルが確立した瞬間である。
逮捕、起訴されたことは仕方がない。
だが、Aさんは再三にわたり、「大丈夫なんですね?」とメーカーに確認を入れていた。
裁判ではその点を強く主張し、「グレーだと思われるものを売るのはやめてください」と突っ込まれてしまうも、この抵抗が功を奏して執行猶予となる。
保釈金を支払い、Aさんは再び世に解き放たれた。
保釈されたその足で、Aさんはウキウキ気分で酒を飲みに行った。
だが、長期の断酒生活が祟り、生ビール二杯とワイン二杯で気を失ってしまう。
その翌日は所轄に置いてある車を回収し、広島の風俗街へ繰り出した。早く大阪へ帰れ。
数年後、そこには元気に店舗運営をするAさんの姿が
「あの時は本当にびっくりしたけど、今となってはいい経験さ。もう二度と怪しいDVDなんか扱わないよ!」
最後にAさんは、笑顔でそう語った。
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