(動物を剥製にするまでの様子を紹介しています。抵抗のある方はコチラからお戻りください)
今回は、2016年5月4日(水)の大阪・道頓堀で開催されたフェティッシュイベント、Hospital GOGO(ホスピタルゴーゴー)vol.13にて、私たちと同じく出店者として参加されていたWunderkammer(ヴンダーカンマー)のナユミさんが主催する剥製講習会に参加しました。
会場は大阪の『Museum bar FOG』

(写真:FOG店内)

(写真:FOG店内)
昆虫標本や剥製が飾られた、ダークファンタジックな店内に気分が高揚します。講習会とは名ばかりで、実はこれから魔術的な諸々が始まるのでは?と錯覚するほど雰囲気に飲まれました。
ショーケースには剥製や骨格標本、ナユミさんが制作された魔術アイテムなどが置かれています。

(写真:FOGショーケース)
集まった参加者は筆者を含めて四名
講師のナユミさんの解説の下、一人一体ずつラットの剥製を制作します。

(剥製用の冷凍ラット)
【(閲覧注意)実際の写真はコチラ】
作業を開始します
まず、胸の辺りから下腹部へ向かって、カッターナイフで慎重に毛皮だけを裂いていきます。

(図解)
【(閲覧注意)写真はコチラ】
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お腹を取り出したら、首と手足の骨を切断します。
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背中から尻尾へ繋がる部分を切断して、皮と肉の分離ができました。
まるで絨毯のようになったラットさん。

(絨毯のようになったラット)
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次に毛皮を裏返して、頭蓋骨から皮を剥がしていきます。頭蓋骨は剥製内部に残すため、眼球を越えたあたりで剥離をやめます。
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眼球はとても綺麗です。
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頭蓋骨の形も綺麗で見入ってしまいました。
かのレオナルド・ダ・ヴィンチは、画家として人体の理解を深めるために病院での遺体解剖を何度も見学したそうです。(こちらはラットですが)確かに実際に解剖されたものの形や構造を観察すると、イラスト制作などの参考になります。
「理解するための最良の手段は、自然の無限の作品をたっぷりと鑑賞することだ。 -レオナルド・ダ・ヴィンチ-」
作業を続けます。
カッターの刃の背を使って、皮に残っている肉や脂肪を取り除きます。大体で良いそうですが、どうも気になってずっとチマチマとこそいでいました。
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眼球を外します。筋肉と視神経を綺麗に切り、眼窩に義眼を入れる余地を作ります。
分離した眼球を、参加者の方が「イクラみたい」と評していました。
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「次はお待ちかねの、脳みそ取り出しです」
ナユミさんの言葉に会場が沸きました。
歯間ブラシを使って、頭部に空けた穴から脳をかき出していきます。脳を取り出していくと、頭蓋骨の中がだんだんと透けて見えてきました。
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ここまでを終えたら、次は毛皮を洗浄します。
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ちなみにここで毛皮を表に返すと、ラットがお風呂に浸かっているように見えます。

(イメージ)
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お風呂から上がったラットさん。さっぱりしてリラックスなさってます。

(イメージ)
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皮の裏に防腐剤をつけます。非常に重要な作業です。
毛の方につかないように気を遣っています。
筆者は精密作業のとき、何故か小指が立ってしまいます。
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眼窩に義眼を付けます。接着にはグルーガンを使いました。

(イメージ)
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ここからが難しかったです!
頭蓋骨の穴にグルーガンを流し込み、骨代わりの軸としてモールを差し込みます。
【(閲覧注意)写真はコチラ】
手足にもモールを巻きつけます。脚には筋肉のふくらみを表現するために、あらかじめ綿を巻きつけて太さをつけておきます。このあたりは完全にフィーリングでの作業だったので緊張しました。
【(閲覧注意)写真はコチラ】
計5本のモールを取り付けたら、皮を表に返します。

(モールを取り付けたところ)
【(閲覧注意)写真はコチラ】
手足のモールを曲げながら、ラットの生前のポーズをつけ、全てのモールを軸に固定します。
これが本当に難しかったです。モールが思うように動かせないというのもありますが、このお風呂上りのくたびれたラットに、想像で元の骨・肉の動きをつけてやる、というのがかなり難しいのです。
上にも記しましたが、ダ・ヴィンチが画家として解剖学の習得を重視した理由がよくわかりました。元の形を知識として知っていれば、この作業の難易度は大分下がるでしょう。
ナユミさんは見本でスイスイとやってのけるのですが、筆者はどうなっているのかがわからず、何度も尋ねてしまいました。

【(閲覧注意)写真はコチラ】
苦労しましたが、ポーズを作れたらもう一息です。
綿を詰め、命を宿らせていきます。
ほっぺの微妙なふくらみにはピンセットに綿を巻いて少しずつ入れていきます。

(綿詰めのイメージ)
【(閲覧注意)写真はコチラ】
バランスを見つつ、縫合していきます。
縫い糸の「玉結び」がわからず、ナユミさんに尋ねる筆者。

【(閲覧注意)写真はコチラ】
綿詰めを終えたら完成です。
綿の量の調整中、FOGのマスターが「大体それぐらいが平均的な大きさですよ」と助言してくださり、とても助かりました。
【(閲覧注意)写真はコチラ】
下は全員の作品の集合写真です。
【(閲覧注意)集合写真】
中央の赤目はナユミさんの見本作品です。
今まで見ることはあっても自分でやるとは想像もしなかった剥製制作。はじめは上手くできるか不安でしたが、やってみるととても熱中して楽しめました。
最後に、今回の剥製講習会の主催者、ナユミさんにインタビューをさせていただきましたので、掲載いたします。

(ナユミさんイメージ)
ものしり.com編集部
「ナユミさんは、主にどういった作品の制作や活動をなさっているのですか?」
ナユミさん
「大阪で剥製や骨を使ったアクセサリーやキメラ剥製の制作・販売を行っています。」
※キメラ剥製:二匹以上・二種以上の動物や、他の部品を合成させて一つの剥製作品としたもの。」
ものしり.com編集部
「ナユミさんの作品を購入できるのは、BABYLONさんとFOGさんだけでしょうか。」
ナユミさん
「あと、銀孔雀さんでも取り扱っていただけることになりました。お店によって置いてもらっている商品が違いますので、お目当てのものがある場合は、HPか、Facebookから見ていただいて、問い合わせていただければと思います。通販も承っていますよ。」
ものしり.com編集部
「”身代わり鳥の足”などの魔女のお守りを販売されていますが、その他にも効能を持つお守りやグッズなどはありますか?」
ナユミさん
「まだHPには載せていないのですが、「呪い返しのウィッチボトル」というものを最近作り始めました。自分に向けられた呪い、怨み、妬み、負のオーラなんかを倍にして相手に返すというアイテムです。怨まれる心当たりがある方にはオススメです。」
ものしり.com編集部
「剥製制作をはじめたのはいつ頃からですか?また、制作しようと思ったきっかけはなんだったのですか?」
ナユミさん
「元々動物を飼うのが好きなんですけど、昔飼っていたウサギが死んでしまって、その子を「もう一度生き返らせたい」と思ったのが始まりです。剥製師の方に話を聞いたり、骨格標本を作っている団体に参加させてもらったり、本を購入したりと、その当時はインターネットにも情報が少なかったので色々なところに足を運んで学びました。その時のウサギちゃんは今でも腐らず、家に居ますよ。」
ものしり.com編集部
「今まで剥製にされた動物を教えていただけますか。」
ナユミさん
「イタチ、ウサギ、マウス、ラット、コウモリ、ヘビ、犬、猫、アヒル、ハムスター、鳥類、鹿など・・・・・・小さいものが多いですね。小さいものや、アクセサリーのほうが若い方に人気なんですよ。」
ものしり.com編集部
「Facebookには、双頭アヒルやカミツキウサギという作品がありましたが、別種の動物同士や人形などを組み合わせた、いわゆる「キメラ」は他にどんなものがありますか。」
ナユミさん
「貝殻を角にしたアクマネズミや、双頭ヒヨコというのもあります。キメラ剥製はこれからも作っていきたいです。現在は翼の生えた猫を制作中です。」
ものしり.com編集部
「まだ挑戦していないもので、剥製にしてみたい動物はありますか。」
ナユミさん
「伝説の生き物や妖怪の剥製を作ってみたいです。死んでいるところを見掛けたら是非連絡をください。」
ものしり.com編集部
「今までで最も大変だった作品、達成感のあった作品を教えていただけますか。」
ナユミさん
「臭いのは嫌ですね。やはり剥製は鮮度が命ですから、臭いニオイがするものはもうダメですね。ちなみにイタチは腐ってなくても臭いです。
達成感があったのは、やっぱり最初に作ったウサギちゃんですね。いまだにふわふわですし、よくできたと思います。」
ものしり.com編集部
「これまでの作品で、傑作と思うものはどれですか?」
ナユミさん
「剥製の世界では、2000体作ってやっと一人前と言われています。作る度に、前よりよくできたなと思います。そういう意味では、最新作の双頭アヒルが良くできたと思います。」
【(閲覧注意)双頭アヒル①】
【(閲覧注意)双頭アヒル②】
ものしり.com編集部
「最後に、剥製の魅力を教えていただけますか。」
ナユミさん
「やはり、ずっと腐らずに生前の姿を留めていられることですね。ペットが死んでしまったとき埋葬してしまうと、もう手元には写真と思い出ぐらいしか残らないじゃないですか。剥製にすれば寿命よりずっと長い命を得るわけですからもっと長く一緒にいられます。」
ものしり.com編集部
「ナユミさん、本日はどうもありがとうございました。」
16世紀、あるオランダの貴族が飼っていたペットの鳥が死んでしまい、悲しんだ貴族はその鳥を「生前の姿で保存しよう」と考え、化学者たちとともに方法を研究し、剥いだ皮に香辛料を詰めて止まり木に飾ったのが剥製のはじまりと言われています。この時の剥製はまだとても原形を留めているようなものではなかったそうですが、「愛する者に永遠の命を」というテーマが彼を動かし、今日までの剥製技術の発達に繋がったのです。
同じテーマを追うところからはじまったナユミさんの制作活動を拝見できたこと、また実際に制作できたことは本当に貴重な体験でした。
魅力的な剥製・標本や魔術グッズは前述のBABYLONさんや銀孔雀さん、ナユミさんのHPで紹介されています。ご興味のある方は是非ご覧になってみてください。
『BABYLON』
『銀孔雀』
今回の講習会の会場となったmuseum bar FOGさん『FOG twitter』

