『神は局部に宿る』都築響一 presents エロトピア・ジャパン展 に行ってきました!
ニュース
6月13日、ものしり.comは、渋谷のアートスペース「アツコバルー arts drinks talk」を訪れました。
ここアツコバルーでは、2016年6月11日~7月31日まで、写真家・編集者の都築響一さんによる「エロ」をテーマにした展覧会『神は局部に宿る』都築響一 presents エロトピア・ジャパン展 が開催されています。
それまで光が当てられることのなかった無名の人々の生活を通して、現代の日本社会を描いている。
こう言われているように、今展覧会でも都築さんのそのスタイルが炸裂しています。
エントランス
まずエレベーターを降りてすぐ、元祖国際秘宝館の看板だった秘宝おじさんの歓迎と、都築さんとアツコ・バルーによるテキストが見られます。
(エントランスの様子)
(今展覧会の概要)
エントランスから見た展示会場の様子です。都築さんが愛した元祖国際秘宝館の大きな看板と、カプセルに入った女性が目を引きます。壁一面の日本全国津々浦々のラブホテルの写真にも驚きました。
(展示会場の様子)
この展覧会の展示物にはキャプションはありません。各展示物の解説のテキストがA4ファイルでまとめられてスタンドやテーブルに置かれており、これを片手に楽しむことができます。テキストは購入することもできます。
では、早速ひとつずつ見ていきましょう。
(会場には解説テキストが置かれています)
ラブホテル
日本人はもしかしてセックスを遊ぶことに、かなり長けているのかもしれないと思えてくる。-解説テキストより-
すごい数の写真です。都築さんの取材の凄まじさを感じさせます。
同ホテルで別ナンバーの部屋の写真があったりするのですが、その趣はそれぞれ全く違います。まるでひと部屋を箱庭と仮定したインスタレーション・アートがそれぞれで行われているようです。
ただセックスするためだけのホテルなら、回転するベッドや鏡張りの壁、滑り台などは必要ではないはず。この遊び心にこだわる趣向は、日本でしか見られないそうです。
(中央パネルの上から二段目・左から二番目はもはや温泉のようです。実際、何人もの人間が一斉に入浴できるそうです。左一つ隣、こちらはその雰囲気から、ドイツのお客様が貸切りで舞踏会を楽しんだとか)
他にも、遊園プールにあるような流れる滑り台の設置された部屋や、映画で使用された部屋の写真もありました。
また、回転ベッドのある部屋では、敢えてシャッタースピードを遅くして回転するベッドの残像を納めていたりと、撮影方法にもこだわって面白さを演出しています。
(回転ベッドの残像)
見方を変えればこれらの部屋は、映画の撮影や、集団で楽しく遊んだりイベントを催せる異空間としても使えるのです。
ところが、このようなラブホテルは法改正による規制で年々減少しています。現在このような設備が揃っている場所は大変貴重なのだとか。
秘宝館
いまセックスにカネの臭いはしても、不自由だったはずの昭和の時代のおおらかさは、かえって失われてしまった気がする。-解説テキストより-
冒頭でも紹介した秘宝おじさんが看板を勤めた元祖国際秘宝館は1971年に開館、その後各地に広まったこの性をテーマにした観光施設は、時代の流れ、価値観の変化によって、次々と閉館の道を辿りました。
性をテーマにした様々な展示作品の写真です。筆者も見入ってしまいました。
ここでは11ヶ所の秘宝館の写真が展示されていますが、現存しているのはそのうちの2ヶ所のみだそうです。
(写真に吸い寄せられる筆者)
冒頭の囚われの身の女性たちや、裸の男性とSFチックな女性の像、入り口すぐに見えたカプセルの中の女性など、会場に展示されているものは2000年に閉館してしまった「鳥羽国際秘宝館/SF未来館」にあったもの。非常に貴重な資料です。
(クールすぎるお二方)
(女性の人形の陰部からパイプが伸び、モニターに繋がっています。モニターに映るのは在りし日の秘宝館の映像)
ベルベット・ペインティング
壁の張り出た部分にひっそりとありながら、しかし刺激的な主張をしてくる三枚の絵画があります。
(魅惑のベルベット・ペインティング)
キャンバスの代わりにベルベットに描かれたもので、黒地のベルベットの上に色を置いてゆくため、明るい部分は引き立ち、影の部分はより印象的に表現できる効果があります。
この三枚の魅力的なベルベット・ペインティングは、鳥羽の秘宝館の階段部分に飾られていたものだそうです。
風俗詩
こういうのがほんとうの、「声に出して読みたい日本語」なのだろう。-解説テキストより-
これがなんだかわかるでしょうか。
この圧倒的な物量と魂を感じる熱いテキストは、西川口風俗エリアにかつて存在した「ザ・バキュームエステ『プッシー』」のwebサイトに掲載されていたコピーだそうです。書いた人物は不明ですが、天才的と言わざるを得ないでしょう。
この文章を見たとき、すぐにある似たものが思い浮かびました。ピンク系のスパムメールです。
最近では、スパムメールの文章がまとめられて、その個性的かつパワー溢れる面白さがネットで紹介されていたりします。
ルーツが同じかはわかりませんが、文化は今も続いており、それが芸術的であると広く認められつつあるのでしょう。
イメクラ
それはもはや風俗産業というよりも、観客の存在しない演劇というべきだろう。-解説テキストより-
跳び箱、事務机、医務室、電車内、教室……。
イメージクラブは、挿入禁止という制約がありながら、一般的な売春サービスと同等の価格で展開し、人気を集めました。
「観客の存在しない演劇」都築さんは、イメクラをこのように表現しています。
これは、(特に男性の)オナニーに置き換えることもできるのではないでしょうか。
想像・動画・画像・音声・それ以外、例えばモノなど、気分に合ったオカズを綿密に選別し、凝る人ならばそこに香り、衣装、アイテムなどのシチュエーションを加えて事に臨む。ほんの一時の快楽のために、何故これほどまで情熱をかけるのか。それは、エクスタシーそのものではなく、そこに至るまでの過程に重きを置くからだと言えるでしょう。
自身の妄想力によって描かれる物語こそが重要で、それは誰にも評価されないのですが、その時確かに芸術は生まれているのです。
ラブドール
大事に扱われていたドールと、そうでないドールでは、表情が違って見えるらしい。-解説テキストより-
下の写真は、言わずと知れたオリエント工業の美しく精巧なラブドールです。彼女の名前は望月かおるさん。瞳に生気を湛え、まるで生きているかのようにそこに居座り、来場者を眺めています。
(望月かおるさん)
こちらは備え付けのウェットティッシュで手を拭き、注意事項を読んだ上で触ることができます。
初めて触ったのですが、驚きました。腕などには芯が入っていますが、バストはちゃんと柔らかいです。
棚と一体化したような不思議な展示もありました。
はじめ、「ダッチワイフ」の開発は性具としての、「エロ」を原動力としたものだったかもしれない。しかし誰もが知るとおり、人類のエロに対するパワーは凄まじい。やがてそれは果てしない、まるで「美のイデア」を追い求めるような芸術活動のはじまりとなったのです。
昨今のシリコン製のリアルドールが「ラブドール」と呼ばれる理由を、この展示が教えてくれます。
性のお達者クラブ
芸術が好きとか、旅が好きとか、釣りが好きとか、そういうのと「女が好き」のあいだに、どんな違いがあるのだろう。-解説テキストより-
四人の男性の写真があります。偶然モノが集まってきたか、誰かに「もっとやれ!」と発破をかけられたか、わが道を信じてひたすらまい進したか、各々違いはあれども、彼らはいずれも「性」をテーマとした人生を楽しんだ人々なのです。
夢中になれるものがあるというのは本当に素晴らしいことです。
(写真右上:知る人ぞ知る、「安田老人」の姿も)
バーカウンター
最後に、バーカウンターの様子をご紹介します。
解説テキストをはじめ、性にまつわる写真集やポストカードが販売されています。ピンク色の表紙の「北村公写真掟」は、前述の「性のお達者クラブ」の右下の男性、北村氏が自費出版された写真集です。
スタッフの方から、北村氏のひたすら性を追い続けた壮絶な生き様を聞かせていただき、我々はただ言葉を失うだけでした。
カウンターにはirohaやキース・ヘリングデザインのTENGAが置かれています。
TENGAエッグを見せてもらいました。中身までキース・ヘリングです。
カウンターのワンコインバーでは、チンザノ、まんこいといった洒落たお酒が楽しめます。
観覧を終えて
解説のテキストは非常に重要で、合わせて見ることで、より展覧会を楽しむことができるでしょう。楽しく見て回りつつも、ラブホテルや秘宝館といった失われてゆく文化に思いを馳せて、少ししんみりもしました。
また、この度取材を許可してくださったアツコバルーの皆様、展示の解説や面白いお話を聞かせてくださったスタッフの方に、感謝の言葉を送りたいと思います。本当にありがとうございました。
『神は局部に宿る』都築響一 presents エロトピア・ジャパン展 は2016年6月11日(土)~7月31日(日)まで、渋谷松濤のアツコバルーにて開催中です。
水~土 14:00~21:00
日~月 11:00~18:00
火 定休日
\1,000
詳しくは『アツコバルー arts drinks talk』様HPにて。
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